ご挨拶

園田 順彦

第43回日本脳腫瘍病理学会学術集会開催に向けて

第43回日本脳腫瘍病理学会学術集会

会長 園田 順彦

(山形大学医学部脳神経外科 教授)

第43回日本脳腫瘍病理学会学術集会を2025年5月30日(金)-31日(土)に山形テルサにて開催いたします。学会に昇格して初めての東北開催ということで、私にとっても山形大学医学部脳神経外科にとっても大変名誉なことだと存じております。

本学会は1982年にウイーンにおける国際神経病理学会のディナーパーティー上で影山直樹先生、石田陽一先生により「脳腫瘍の病理を専門に扱う研究会を作ろう」という会の素案が話し合われ、翌年、1993年、上記の先生方に吉田純先生、河本圭司先生を加えた創立メンバーのお力で日本脳腫瘍病理研究会として発足いたしました。その後、会は順調に発展し1997年には日本脳腫瘍病理学会として日本神経病理学会から独立いたしました。本学会の特色は神経病理医・脳神経外科医、小児腫瘍医、研究者などさまざま領域の専門家が一同に会し脳腫瘍の診断・治療に関して学際的交流を行うのみならず、若手医師の教育を行うことも大きな目的としているという点にあると言えます。

第43回日本脳腫瘍病理学会学術集会の主題を「集約化と均霑化」といたしました。2016年のWHO分類改訂第4版の出版以降、日本における脳腫瘍病理診断は大きく変化いたしました。これまで研究レベルで解析されてきたIDH遺伝子変異、1p/19q共欠失などの分子診断が形態病理診断同様に必須となったからです。この傾向は2021年に出版されたWHO分類第5版ではさらに顕著となり、メチル化解析等も診断に必要な状況になっております。現在、我が国では脳腫瘍の治療が行われているすべての施設で、正確な診断を行うのは事実上不可能となっています。この状況下で我々が目指すべきは「集約化と均霑化」だと思います。

希少疾患の分子診断、網羅的解析など研究的側面の大きい解析には中央診断システムの構築が不可決ですが、この集約化のためには人的・経済的なサポートが必要です。また比較的頻度の高い疾患に対する分子診断・治療に直結し迅速性の求められる分子診断には、どの病院・地域でも行える均霑化が求められますが、これには保険診療の整備が急務です。一方で分子診断の重要性があまりにも強調されると、逆に形態病理診断の意義が不当に低く認識される事も危惧いたします。

本学会では「集約化と均霑化」の現状と問題点を議論し、今後の方向性を示せるような会に出来たらと思っています。また今回は特に良性脳腫瘍・間脳下垂体疾患も取り上げ、最新の知識をアップデートしていただきたいと考えています。もちろんこれまでの学会同様に「脳腫瘍病理教育セミナー」、「臨床病理検討会」も予定しております。

新緑の山形は風景も美しく、食べ物も美味しい時期です。皆様にお越しいただき実りの多い会にするとともに、楽しんでいただければ幸いです。

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